カテゴリー別アーカイブ: 住宅ローンの基礎

DH住宅ローン指数について

住宅ローン金利は、数多くの銀行が独自に設定します。もしかすると銀行ごとに違いがないと誤解されている方もいるかもしれませんが、調べていただけるとわかると思います。

銀行ごとに、金利はかなりの違いがあります。
それは、1,300社も超えるという住宅ローン取扱金融機関数を考えれば当然だと言えます。

住宅ローンは、すべてで数万種類を超える商品があると言われていて、それぞれが独自の動きをしているため、全体的にどのような動きをしているのか把握するのが困難な状況になっています。

すべての商品を情報収集するのは不可能であるため、主要と考える金融機関の金利の動きを示す指数を作成することとしました。作成は、ダイヤモンド不動産研究所とホームローンドクターが共同で行い、「DH住宅ローン指数」として公表させていただくこととなりました。

住宅ローン金利は、金融機関がその時点で利用できる金利を、自身のホームページに掲載しています。また、いくつもの情報サイトが住宅ローンを取り扱うようになり、複数の金融機関の金利情報をまとめて金利を見ることができるようになりました。中には、300社超えるデータを掲載するサイトがあったり、過去のデータもあわせて掲載するサイトもあったりして、住宅ローン金利にアクセスするための環境は、徐々に整ってきています。

ただ、まとめサイトが取り扱う住宅ローンの情報は、そのほとんどが必要なデータの一部だけしか掲載されていません。もちろん、情報の一部だけであっても確認できるだけで有益なのですが、比較するためのデータとしては不適切だと考えます。それは、住宅ローンのコストが、金利だけでなく借入にかかる諸費用とともに構成されているからです。

その重要性は、規制当局も認識しています。例えば、貸金業法では、顧客に金利を提示する場合、表面金利だけではなく「実質金利」を提示することを義務づけています。「実質金利」とは、住宅ローンを借りるにあたって発生する費用を金利換算し、表面金利に加算したものです。米国においても、APRという日本における実質金利に相当する金利の表示が義務付けられています。

こうした事情を踏まえ、本指数の基礎データはAPRを採用しています。
APRの計算方法は、住宅金融支援機構が発表している計算方法に準拠しています。
https://www.simulation.jhf.go.jp/type/simulation/common/APRSetumei.html

金利タイプの推移を見れば、以下の傾向が観察できるでしょう。
【変動金利】緩やかに金利が低下を続けている
【10年固定】2021年ごろから金利上昇が始まった、しかし一方的な上昇ではない
【全期間固定】2019年に底打ちして金利上昇が始まり、2021年から急速に上昇しているが、一方的な上昇ではない

金利タイプごとの金利の動きの違いが、将来の金利の動向も指し示すこともあります。

1. DH住宅ローン指数の金利タイプ

DH住宅ローン指数は、3つの金利タイプにより構成されています。
「変動金利」「10年固定」「全期間固定金利」
ちなみに全期間固定金利には、フラット35が含まれています。
他にも金利タイプはありますが、金融機関が採用している数や、取引が集中している等の理由からこの3つを選びました。

異なる金利タイプの指数の時系列変化の違いを見ることで、金利だけでなく、金融機関のスタンス、景気動向などの変化を読み取ることができるでしょう。

2. 金融機関について

対象とする金融機関は、原則、全国区で利用できる金融機関としています。必ず日本のどこでも利用できることを条件としている訳ではありませんが、地方銀行やその他の金融機関は地域が限られていることが多いため、対象から外しています。

また、金融機関はセクターとして「大手銀行」「ネット系」「その他」の3つノセクターに分類しています。

「大手銀行」は、みずほ銀行、三菱UFJ銀行、三井住友銀行、りそな銀行、三菱UFJ信託銀行、三井住友信託銀行です。

「ネット系」は、PayPay銀行(旧ジャパンネット銀行)、ソニー銀行、楽天銀行、住信SBIネット銀行、auじぶん銀行(旧じぶん銀行)、イオン銀行、SBI新生銀行(旧:新生銀行)です。
イオン銀行やSBI新生銀行などはネット銀行ではありませんが、住宅ローンの取り組み方や、商品設計が既存の金融機関とは異なっているため、ネット系に分類しています。

「その他」は、ARUHI、優良住宅ローンなどで、フラット35を主に取り扱う金融機関(モーゲージバンク)となっています。

これらの金融機関のセクターごとに、金利の動きがやや似通っているため分類していますが、指数化するかどうかは、現在検討中です。

3. 金利の計算の根拠等

基礎データとするAPRの計算の前提条件として、借入金額3,000万円、借入期間35年、元利均等返済、普通団信適用としています。諸費用については、融資手数料、保証料、団体信用生命保険料を対象としています。

まず、各銀行の金利タイプごとに、手数料タイプ(事務手数料型、保証料前払型、保証料後払型)、優遇タイプ(当初期間優遇型、全期間優遇型)の組み合わせに対して(最大6種類)、最もAPRが低いものを計算対象としています。例えば、ソニー銀行の変動金利には、手数料タイプは事務手数料型のみで、優遇タイプは当初期間優遇型と全期間優遇型の2種類です。従って、「事務手数料型、当初期間優遇型」と「事務手数料型、全期間優遇型」のどちらかAPRが低い方の1つだけを、ソニー銀行の変動金利として採用しています。

ただし、優遇適用によりAPRが低い場合、その優遇の条件が弊社が考える一般的な基準を超えていれば(例えば、自己資金50%以上とか、ZEH住宅である等)、その金利は採用しません。ちなみに一般的な基準を公表する予定はありません。

金融機関名金融機関セクター金利タイプ商品名
みずほ銀行大手行変動金利
10年固定
全期間固定
みずほネット住宅ローン
みずほ住宅ローン
フラット35(機構買取型)
三菱UFJ銀行大手行変動金利
10年固定
全期間固定
住宅ローン
三井住友銀行大手行変動金利
10年固定
全期間固定
WEB申込専用住宅ローン
フラット35(機構買取型)
りそな銀行大手行変動金利
10年固定
全期間固定
りそな住宅ローン
フラット35(機構買取型)
三菱UFJ信託銀行大手行変動金利
10年固定
全期間固定
三菱UFJネット住宅ローン
三井住友信託銀行大手行変動金利
10年固定
全期間固定
住宅ローン<住まいのアシスト>
フラット35(機構買取型)
PayPay銀行ネット系変動金利
10年固定
全期間固定
住宅ローン
ソニー銀行ネット系変動金利
10年固定
全期間固定
住宅ローン
変動セレクト住宅ローン
固定セレクト住宅ローン
楽天銀行ネット系変動金利
10年固定
全期間固定
楽天銀行住宅ローン(金利選択型)
フラット35(機構買取型)
住信SBIネット銀行ネット系変動金利
10年固定
全期間固定
住宅ローンWEB申込コース*
フラット35(機構買取型)
フラット35(保証型)
auじぶん銀行ネット系変動金利
10年固定
全期間固定
住宅ローン
イオン銀行ネット系変動金利
10年固定
全期間固定
イオン銀行住宅ローン
フラット35(機構買取型)
SBI新生銀行ネット系変動金利
10年固定
全期間固定
パワースマート住宅ローン
ARUHIその他全期間固定フラット35(機構買取型)
スーパーフラット
優良住宅ローンその他全期間固定フラット35(機構買取型)

4. DH住宅ローン指数の最新について

最新の住宅ローンの動向等の記事については、ダイヤモンド不動産研究所「金利最前線」にて連載しております。

イールドカーブ分析について

イールドカーブとは、債券の利回り(イールド)を、償還までの期間に応じて線で結びグラフ化(カーブ)したものです。

住宅ローンでいえば、住宅ローンの金利を、固定期間に応じて、線で結んでグラフ化したものとなります。

住宅ローンには、変動金利から全期間固定金利まで、固定期間が異なる金利タイプが複数存在しているため、どの金利タイプを選択すればよいか判断が難しいところです。イールドカーブを分析することで、その判断材料の一つとして利用できると考えています。

住宅ローンのイールドカーブとは

住宅ローンのイールドカーブは、まだ普及していえないでしょう。
その理由は、イールドカーブの作成法と利用法が確立されていないから、と考えています。

まず、住宅ローンのイールドカーブについて、弊社がどのように作成しているかを説明します。

まずは、縦軸となるイールドについてです。債券の場合は、最終利回りを利用するのが一般的ですが、住宅ローンの場合、APRが妥当であると考えています。表面金利(住宅ローンの適用金利)を採用しないのは、住宅ローン利用者にとって表面金利は実質的な負担を表さないからです。特に、手数料や団信特約料負担が異なっているにもかかわらず、表面金利だけで比較するのは無理があります。従って、利用者にとっての実質的な負担である、表面金利、固定期間終了後金利、諸費用などの要素がすべてが反映されている指標で比較すべきと考えます。
そして、その条件を満たすAPRが最適だと考えます。

また、対象とされるデータが膨大であるため、弊社がウォッチしている19社に対象を制限しています。19社に選定した理由は、全国区で利用できることを第一条件としました。また、金融機関数を絞るもう一つの理由は、APRを計算する作業が煩雑であるため、対象数を制限する必要があったためです。

最終的に固定期間に相当するイールドとして採用するAPRは、それぞれの固定期間の最安値としています。平均値を採用するという考え方もありますが、各金利タイプにおける標本数にかなりばらつきがあり、また、利用者が知りたいのは最安値であろうという想定から、現時点では最安値を採用しています。

横軸となる固定期間については、半年、1年、2年、3年、5年、7年、10年、15年、20年、30年、35年の11種類としています。全期間固定は35年として取り扱い、上記以外の固定期間は対象の19社の商品にはないため、採用していません。対象となる金融機関が別の固定期間を追加したら、また、上記固定期間を有する金融機関が1社もなくなれば、原則、それにあわせて変更する予定です。

下記グラフは、

1年固定のAPRがイールドカーブの形状からすると異常値のように見えることでしょう。
この状況は、弊社がイールドカーブを作成し始めた7年前からも、同じ状態が続いています。
1年固定を有している金融機関は少なく、その金融機関のスタンスがそのまま反映されてしまうことが原因なので、今後とも継続される可能性があり、異常値として無視してよいと考えます。

イールドカーブの形状と示す意味

イールドカーブの曲線の形状は、金利の上昇や低下を、市場関係者がどのように予想しているかを教えてくれると言われています。住宅ローンのイールドカーブでも同じと見てよいでしょう。

イールドカーブの形状には、大きく2つのタイプがあり「順イールド」と「逆イールド」があります。

順イールド

イールドカーブは、通常は右肩上がりの形状をしていて、「順イールド」と呼びます。
固定期間が長くなると住宅ローンを返せなくなるリスクが高まるため、固定期間が長くなればなるほど金利が高くなると一般的には考えられています。
下のグラフは、イメージ図であって、実際のイールドカーブではありません。

このタイプのイールドカーブは、経済が成長する景気拡大時(金融緩和)に見られるのが一般的です。
2023年現在、住宅ローンのイールドカーブも順イールドとなっていて、金融緩和の真っただ中であることが確認できます。今後、景気が拡大するかどうかは議論が分かれるところではありますが、景気回復を指し示す指標もあり、その可能性がある限り、順イールドであることは変わらないでしょう。

逆イールド

イールドカーブは右肩下がりとなることがあり、その状態を「逆イールド」と呼びます。
前述の通り、固定期間が長くなると金利が高くなるのが通常ですが、固定期間の短い金利が、固定期間の長い金利を上回るような状態になることがあります。
これは、中央銀行が金融引き締めを行い、政策金利を引き上げることで起こる現象です。
中央銀行は、景気の過熱やインフレを抑制するため、主に政策金利を引き上げたり、供給通貨を減らしたりすることで、経済活動を抑制します。それから景気後退期が始まっていくと考えられ、長期金利は景気の変化を見越して低下していきます。
金融引き締めが起きると、住宅ローン金利は、固定期間が短い金利は、日本銀行の金融政策に強く影響を受けるため、変動金利を中心に固定期間が短い金利が上昇しやすくなります。
下のグラフは、イメージ図であって、実際のイールドカーブではありません。

この状態になると、融資の金利が上昇することで、法人の投資活動や個人消費が縮小し、景気が後退していくことが予想され、金融市場では将来的な金利低下を警戒するようになります。
2023年現在の米国債は、「逆イールド」になっています。物価上昇に対抗するための政策金利引き上げが続き、また金利上昇により米国のリセッション入りが懸念されて長期金利が低下したことにより、短期金利が長期金利を上回る状態になりました。

イールドカーブの変化

イールドカーブは常に変化しています。この傾きのパターンは、景気の動向によって共通のパターンが見られ、将来の金利や経済の見通しを示していると言われています。その代表的なものが「フラット化」「スティープ化」です。

フラット化

イールドカーブは、通常右肩上がりになっていますが、その傾きがなくなり平坦化することをフラット化(フラットニング)と呼びます。

景気が拡大から後退に向かう時期によく見られますが、景気が底打ちする時期にも見られます。

急激な経済成長を抑えるために中央銀行が金利を引き上げるときに最もよく見られます。イールドカーブのフラット化とは短期金利が上昇しインフレ期待が高まっていくことで、長期金利が下落して曲線の角度が小さくなることを指します。

グラフは、日本銀行のイールドカーブコントロール(YCC)が導入される直前の2016年8月時点のものです。当時は、同年1月に導入されたマイナス金利政策の影響で、市場関係者が金利の方向観を見失い、10年国債はマイナス金利が常態化していました。住宅ローン金利も、国債金利の低下を受け、変動金利から全期間固定金利が0.5~1.0%の狭い範囲に収まるというフラット化が起きました。翌月、YCCが導入され、10年国債は0%に誘導すると発表されると、10年国債は徐々に上昇をはじめ0%に向けて上昇が始まりました。

これから景気の底打ちの時のフラット化です。ただ、この状態は、景気拡大に向かうサインと見ることもできますが、まだ、景気拡大の足取りはしっかりしたものではない、との見方もあり、拡大が始まったと断定することはできない状態です。

スティープ化

イールドカーブは、曲線の傾きが大きくなることがあり、それをスティープ化(スティープニング)と呼びます。

これは、景気拡大期によく起こります。景気拡大期には、景気の過熱や物価上昇が見込まれ、長期金利が短期金利よりも早いスピードで上昇し、曲線の角度が大きくなります。

日本の住宅ローン金利においても、2019年以降は長期金利を中心に金利の上昇が始まりましたが、短期金利はそれほど変化しませんでした。グラフのように、2022年から2023年にかけて、長期金利だけ上昇し、短期金利はほとんど変化がなかったので、スティープ化が起こりました。

2023年7月現在では、コロナ禍による影響も小さくなり世界的な景気回復の動きがある一方、世界的な物価上昇により多くの国が金融引き締めを行っていてリセッション入りの懸念もあります。これまで金利は上昇してきましたが、最近では上昇の動きもとまっています。これから更なるスティープ化があるかどうかは、不透明です。

住宅ローンのイールドカーブの具体的な利用方法

日本における住宅ローンのイールドカーブで、債券のイールドカーブのように、景気や金利動向を予想するのに利用できるだけではなく、弊社では固定期間の割安性が計れると考えています。
下記のグラフを見てください。

グラフ1

変動金利から全期間固定金利まで補助線を引くことで、当該期間における、固定期間が異なる金利タイプの割安・割高が一目瞭然になります。補助線よりも下にあれば割安、補助線よりも上にあれば割高と判断できます。

グラフ1は、2018年4月のイールドカーブです。この時期は「順イールド」で、「フラット化」から「スティープ化」に変化し始めた時のものです。金利がどのように動くか、市場関係者も方向性を見いだせなかったため、毎月傾きが変化していました。
これを見ると、補助線よりも下となっている10年固定は、割安水準であるといえるでしょう。
また、1年固定、15年固定、20年固定、30年固定は、割高になっています。

グラフ2

グラフ2の2023年7月現在では、補助線を下回るような固定期間はありません。
従って、現在、変動金利と全期間固定金利は、他の固定期間に対して割安であるといえます。
10年固定、20年固定は、補助線との乖離幅は大きく、かなり割高になっているようです。

ちなみに、変動金利と全期間固定金利そのものの割安・割高を分析するには、イールドカーブ分析よりも、スプレッド分析の方が適しているでしょう。

日本銀行のイールドカーブコントロールとは

日本銀行のイールドカーブコントロール(YCC)は、2016年9月から導入された日本銀行の金融政策の一つです。
日本国債の最終利回りを残存期間ごとに線で結んだイールドカーブを、日本銀行が望ましいと考える形状に誘導することです。具体的には、「短期政策金利」と、残存期間約10年の国債の(長期)金利の誘導目標を定め、その水準を維持することでイールドカーブ全体を操作しようとして、「長短金利操作」とも呼ばれています。

導入以前は、長期金利の決定は市場に委ねられていましたが、本政策導入以降、長期金利が日本銀行の実質的な管理下に入ったといえそうです。
日本銀行は、2023年7月現在では、10年国債を±0.5%以内に誘導するとしています。もし、10年国債が0.5%を超えそうになったり、超えた場合には、0.5%以内におさえるため、国債を買い入れることで人為的に需給バランスを操作して誘導したい金利水準に押し下げようとします。

現在、同様の金融政策を採用している国はないようで、日本銀行のみが行っている取扱いが難しい金融政策だといられています。それはYCCをやめると金利が急上昇するリスクがあるためで、いつYCCを緩和または解除するのか、そしてそのリスクをどのようにコントロールしていくのか、注目を集めています。

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講師 淡河範明(おごうのりあき)

ホームローンドクター㈱代表取締役

銀行、証券会社を経て現職。
住宅ローン専業のコンサルティングを国内で最長の17年間続けており、これまでの相談件数は6,000件を超える。
住宅ローン選びに強みをもち、ダイヤモンド不動産研究所の住宅ローンランキング、その他多数の情報サイトへ監修、助言等を行っている。
著書には、「ウサギのローン カメのローン」「住宅ローンを賢く借りて無理なく返す32の方法」等多数。

プライバシーポリシー

金利予測について

金利予測は、当たらないと思っていた方がよいでしょう。
また、予測をする期間が長ければ長いほど、難しくなります。

もちろん、弊社は予測が本業ではないので、「予測が当たらない」と主張しても、説得力がないかもしれません。

しかし、名だたる経済研究所等であっても、常に予測を的中させてきた訳ではありません。

これは、「金利予測に意味がない」と言いたい訳ではありません。
私個人も、色々な研究機関や運用会社のレポートを参考にしています。

金利予測とのつきあい方

未来は不確実であることは間違いないでしょう。
そうは言っても、どうにかして実現可能性の高い未来のことを知りたくなります。

未来を考える有力な材料であるといえます。
しかし、その予測がどれほど実現する可能性が高いのか、誰も保証することはできません。

それを前提とすれば、金利の動きについて、一つのシナリオだけしか採用しないとすると、危険であると言わざるを得ません。
しかし、あらゆる可能性を考慮するには、その技術も時間も体力も足りません。
よって、専門家の金利予測は、実現可能性が高いシナリオとして利用価値が高いと考えています。

従って、1つの予測だけを採用するのではなく、いくつかのシナリオを用意するのがよいと考えます。そして、複数のシナリオから導き出される、メリットやデメリットなどを勘案し、最終的な判断をするのがよいと考えます。

こんな話をするのは、最近は一つのシナリオに賭ける人が増えているからです。

金利予測をするのはよいのですが、リスクシナリオをたてていないようです。
また、人にすすめられるまま、商品の研究もせずにリスク対策も講じていないようです。

それは、あたかも傘を持たずに何日間か旅行にでかけるようなものでしょう。
晴れが続けばよいのですが、雨が降るかもしれません。
天気の話だけであれば、雨が降ればビニール傘を買えばよいでしょう。

しかし、住宅ローンの場合は最悪のケースは、そんな簡単な挽回策はないのです。
5%ルールなどは、支払い負担がマイルドになるだけで、全体的な負担はむしろ増えてしまいます。

あなたが、何らかの理由で返済が困難になり、家に住み続けられなくなるとしたら。
真剣にリスクを検討し、予め対策を検討しておいてほしいのです。

もちろん、金利予測をかなり高い精度で行えると自信があるのであれば、とやかく言いません。
しかし、その自信がないのであれば、一つの予測に全額賭けるのはやめるべきです。

金利予測はどこを調べればよいのか?

ネットで「〇〇年の住宅ローン金利を予測します!」みたいな記事がよくあります。
個人的には、そのようなものは全く参考にしていません。
なぜなら記事を書いている人が、住宅ローンの金利予測の専門家ではないからです。

また、住宅ローンの専門家のように見える人(決して予測が本業ではない)の中にも、住宅ローン金利は10年上がらないとか、当面上げられないとか、主張する人もいます。それらは、全く参考にしていません。それらは、どうしても営業トークでしかないと感じられるからです。
一応目は通しますけど。

私が見るのは、主に経済研究所や運用会社のレポートや情報媒体のニュースです。
複数のものを読むことで、関係者の合意形成がどこら辺にあるのか確認するとともに、将来の変化の予兆を読みとりたいからです。
決して、それらを全面的に信頼することはないのです。

個人的に参考にしているのは、以下の通りです。

  • 大和総研:日本経済中期予測
  • みずほリサーチアンド&テクノロジー:内外経済見通し
  • 三菱UFJリサーチ&コンサルティング:日本経済の中期見通し
  • ニッセイ基礎研究所:中期経済見通し
  • 日本銀行:経済物価情勢の展望(展望レポート)
  • 明治安田生命:国内債券見通し
  • ブルームバーグ:債券週間展望

他にもありますが、短期的、長期的見通しを万遍なく見るのがよいと信じています。

自己資金と頭金

自己資金と頭金、どちらも聞いたことがあると思います。
どちらも同じような意味だと思いましたか?
それは普通の感覚です。

しかし、それぞれに違った使われ方をするので、正確に理解して使い分けしましょう。

実は、この用語について定義が確定している訳ではありません。
大手の情報サイトでも、残念ながら勘違いを助長するような定義をしています。

頭金とは

まず「頭金」の一般的な定義をみてみましょう。

「売買代金の分割払いの約束があるときに、買い主が最初に支払うべき金額。土地、家屋、自動車その他比較的高額の品物の売買について行われ、頭金を支払えば、目的の物が買い主に引き渡される。そのため通常、頭金の額は1回の分割支払い額よりはるかに高額の場合が多く、総代金の5分の1から2分の1に及ぶこともある。手付金とは異なり、頭金には多くの場合解約手付の性質はない。」出典「日本大百科全書」

住宅取引の場合は、上記の説明とは少し異なった使われ方をしています。
土地、家屋と例に出ていますが、どちらも、最初にお金を支払っても、目的の物が買い主に引き渡されることもないし、頭金が20~50%に及ぶことはなく、せいぜい5~20%です。頭金の定義とは微妙に一致していません。

ただ、頭金には「頭」という文字がついていることから、「買い主が最初に支払うべき金額」という性質があるとみるべきと考えます。土地では手付金を、家屋の建築では契約金を最初に支払うので、これらは頭金と呼べる可能性があります。
しかし、後半部分に「頭金には多くの場合解約手付の性質はない」とあり、契約を解約した場合には返金されるものだとわかります。手付金の場合には、解約した場合には手付金は没収され、損害賠償金は発生しないので、頭金ではないといえます。契約金の場合は、解約した場合は損害賠償金が発生するので、頭金と呼んでよいのかもしれません。

あるサイトでは、頭金の定義を「住宅価格から住宅ローン借入額を差し引いた部分の金額を指します」としています。
これもわかりやすいのですが、最後の支払い時に住宅ローンで足りない部分を現金で支払うことがあります。そのサイトの定義にのっとれば頭金なのですが、「最初の支払い」ではない点に強烈に違和感を感じてしまいます。

自己資金とは

自己資金の定義を調べてみても、なかなか明確なものはなく、違い比較辞典というサイトに以下のような説明があった。
「自己資金とは、自分が働いたり投資したりして蓄積した資金であり、借りているお金ではない、自由に使える資金を意味している」

前述のサイトが定義する「住宅価格から住宅ローン借入額を差し引いた部分の金額」は、上記の定義をみれば「自己資金」と呼ぶのべきだと考えます。

また、住宅ローンは資金使途が特定されていますが、自己資金は何にでも使えるため、まさに定義通りだと言えます。

ちなみに、私の自己資金の正確な定義は、「住宅価格と諸費用の合計額から住宅ローン借入額を差し引いた部分の金額を指します」となります。
これは、住宅価格以上に住宅ローンを貸す銀行が増えていることから、現状にあわせて微調整しました。

金利リスクについて

金利リスクについては、様々な説明がなされています。

現場では、銀行員が「変動金利には、金利リスクがあります」と説明しているようですが、それでわかる人はいないでしょう。

金利リスクを、金融用語の辞書等で調べると「金利の変動により、保有資産の価値が変動してしまう可能性」のように定義されています。

住宅ローンにおきかえると「金利変動により、利息額が変動してしまう可能性」となります。

金利が動く方向で、リスクが変わる?!

金融の世界では、リスクとは可能性のことで、そこに「良い、悪い」といった評価は入りません。

例えば、金利上昇局面であれば、金利リスクがある商品の利払い額は増える可能性が高いでしょう。これから住宅ローンを利用しようとする人にとっては、金利リスクのある商品は「怖い」とか「悪い」商品と感じられるかもしれません。

逆に、金利下降局面であれば、その利払い額は減ると見込まれます。住宅ローンの利用予定者にとって、金利リスクのある商品は「良い」商品であると感じられることでしょう。

つまり、金利の動きで変わるのは、金利リスクそのものではなく、その商品を利用しようとする人の評価なのです。

ただ、金利がどのように動くのか、人の判断が入っています。これがあっていればよいのですが、その保証はありません。どんな専門家が言おうと、大多数の人が合意していたとしても、「間違っているかもしれない」のです。

ある人は、これまで数十年間、金利は上がることがなかったので、これからも上がらないと言います。専門家と思われる人の中には、しばらくは金利は上がらないと断言している人すらいます。
ただ、「そういう考え方がある」というだけで、参考にはしてもよいのですが、その意見を全面的に支持すべきではありません。

また、2023年の時点では、日本国内の金利は超低金利にあり、世界中の金利が上昇傾向にあります。日本だけ金利が低いまま据え置かれていますが、世界的な物価高が継続しているのを見て、金利上昇は時間の問題だと主張する専門家もいます。
これも、「そういう考え方がある」と参考意見の一つとすればよいでしょう。

予測の精度を上げるための努力は尊いかもしれませんが、役には立たないのです。

それよりも、金利リスクとのつきあい方を学ぶ方が実践的だと考えます。

まずは金利変動によって想定される変化が、家計にとってどのくらいの影響を与えるのか、計測するところから始めるべきです。

金利が上がっても、全く影響のない余裕のある家計もあるでしょう。
しかし、金利が上がると、毎月が赤字に転落してしまうほど借りてしまう人もいます。

金利上昇によるダメージが家計にとって大きいと判断するならば、次はリスク対策を検討しましょう。
リスク対策にはどんなものがあり、効果があるのか、コストはかかるのか。
すべて検討した上で、ベストな対策を導き出しましょう。

最終的に、リスク対策が本当に必要かもう一度考え、必要だと思うなら、リスクの管理体制を構築し、対策を準備することとなります。

こうすとこで、金利リスクを持つ商品を選択しても、金利上昇による悪影響を抑えることができるようになるでしょう。

金利リスクの大きさ

「金利リスクが大きい」ことを、「金利の変化に対して利払い額がより大きくなる」と定義させてください。

例えば、金利が1%上昇する場合、毎月返済額がどれくらい大きくなるかを計算してみてください。

ここでは、金利タイプごとに2年後に金利が1%上昇した場合の、毎月変動額がどれくらい変化するのかを計算してみました。
前提条件としては、借入金額4,000万円、借入期間35年、元利均等返済とし、2023年6月現在の弊社がウォッチしている金融機関19社の、金利タイプ別当初金利最安値を採用しています。(全期間固定金利は変動幅が0円なので、除いております。)

このグラフを見ると、以下のようなことがわかります。

  • 最も金利リスクが大きいのは、2年固定で約23,000円
  • 変動金利は、第4位で約19,000円
  • 固定期間とリスクの大きさは、必ずしも比例の関係があるとはいえない

教科書などには、「固定期間が長くなればなるほど金利リスクは小さくなる」と書かれています。
おおよそその傾向があるように見えますが、必ずしもそうではないようです。

金利リスクと金利予測は別もの

変動金利が1%金利が上昇した場合、毎月返済額が約19,000円増加しま

さて、この数字があなたの家計にとって負担になりますでしょうか。
これだけでなく、色々なパターンを計算してみてください。
金利が2%上昇すればこの倍、0.5%がこの半分として、家計への影響を計測してください。

ただし、赤字で書かれた増加額は、あくまでも借入金額、借入期間、返済タイプ、現在の金利水準、金利上昇時期と上昇幅がセットになって決まってきます。この数字だけ覚えても意味がなく、あなたの借入条件にあわせてその都度、計算しなくてはならないので、ご注意ください。

リスク・マネジメントを行う重要性は、既にお話ししました。
リスク管理の観点からは、「住宅ローン金利の上昇がどのくらいの確率でおこるのか」を計測したいところです。しかし、35年もの長期間の確率を予測することは現実的はないので、確率に頼ることはできません。

私の提案は、起こってほしくない将来を確実に避けるプランをたてることです。
ただ、リスク対策のコストが高すぎると感じるなら、リスク回避とコストのちょうどよいバランスをみつけることになるでしょう。

住宅金融支援機構のアンケート結果を見ると、半分くらいの人は具体的な対策がたてられていないか、現実的ではない対策をたてているようです。それは、誰も実効性のある方法論を教えてくれないからだと思います。
住宅ローンのリスク管理を、もう少し論理的に行うのが当たり前になるよう願っています。


融資タイプについて

融資タイプは、耳慣れない言葉だと思います。
ネットで検索したとしても、辞書にすらのっていません。
それもそのはず、私の造語だからです。

融資タイプとは、融資をするタイミングにより分類されます。

    • 当初一括融資
    • 分割融資
    • 最終一括融資

    融資タイプを知らないと、金利や諸費用面で差がつくことがあります。

    購入予定の住宅の種類により、選べる融資タイプが異なってくるので、事前に調べておきましょう。

    当初一括融資とは

    当初一括融資とは、物件の購入や建築契約時等、最初に支払が発生するタイミングで、必要金額を全額融資するタイプです。

    注文住宅、中古住宅(リフォームあり)など、支払い回数が複数回あるものが対象となります。

    取扱金融機関は、地方銀行、信用金庫などに多く、大手銀行やネット銀行などは取扱いがありません。

    利用者にとってのメリット

    最初に住宅ローンを全額借入するため、途中の支払いがあっても余計なコストをかけずに支払いができます。よって、諸費用が全タイプで最も安くなります。

    金利上昇局面では、早めに金利を確定できるため、利息が安くなりやすいです。

    融資実行時に全額、団体信用生命保険が付保されるため、万が一建築中に死亡しても、全額保険で住宅ローンんが支払われるため、安心です。

    利用者にとってのデメリット

    地方銀行などが多く、金利が相対的に高く、利息が高くなりやすい。

    金利が下降局面であると、金利が高い時点で決まってしまうことがあり、利息が高くなりやすいです。

    融資実行の翌月から返済が始まるため、現在賃貸住宅にお住まいの方は、支払いが二重払いとなり負担が大きくなります。

    最初に住宅ローンが実行されてしまうため、完成までの期間中に、借入金額を増額しようと思ってもできません。

    分割融資とは

    分割融資とは、支払いのタイミングごとに必要資金を貸してくれます。

    ただし、銀行により2~5回と分割回数が異なるため、必ずしも必要な時期に借りられる訳ではありません。分割回数が2回だと、土地と建物に1回ずつとなり、建物代金を複数回支払う場合には対応できません。

    注文住宅、中古住宅(リフォームあり)など、複数回の支払いがある場合に、適用できます。

    取扱金融機関は、みずほ銀行、三井住友銀行、三井住友信託銀行、SBI新生銀行、横浜銀行など大手銀行を中心にいくつかありますが、数は多くありません。

    利用者にとってのメリット

    必要な時期に、必要なだけ資金調達ができるため、安心できます。

    金利が安い銀行が多く、利息が安くなりやすいです。

    諸費用も、当初一括タイプに比べると高くなるが、そこまで高くはなりにくいです。

    融資実行時に金利が決まるため、金利が動いても、タイミングや金額が分散され平準化されるため、高すぎず、安すぎない金利になりやすいです。

    利用者にとってのデメリット

    分割回数が増えると、手続きの回数もふえて、煩雑になります。

    分割が2回までの銀行の場合、建物代金の支払いが完成時にしか貸してくれないため、つなぎ融資を利用する必要があります。

    融資実行の翌月から返済が始まります。融資実行ごとに返済額が増えていくため、完成までの支払い負担が家計にとって重荷になることがあります。ただし、銀行によっては負担を軽減するため、利払いのみにすることができます。

    融資実行ごとに、団体信用生命保険がつくため、万が一建築中に死亡すると、建物の完成が簡単ではなくなります。

    最終一括融資とは

    最終一括融資とは、完成するまで融資実行がありません。

    マンション、分譲住宅、建売住宅、中古住宅などのように、支払いが1回のものが対象です。

    注文住宅、中古住宅(リフォームあり)などのように複数回の支払いがある場合には、つなぎ融資を利用する必要があります。

    取扱金融機関は、ネット銀行などに多く、フラット35も最終一括です。

    利用者にとってのメリット

    必要な時期に、必要なだけ資金調達ができるため、安心できます。

    金利が安い銀行が多いく、利息は安くなりやすいです。

    金利が下降局面にある場合には、利息が安くなりやすいです。

    諸費用はやや高くなりやすく、つなぎ融資を利用する場合にはより負担が大きくなりやすいです。

    つなぎ融資を利用する場合には、完成までの期間中に返済負担がないため、家計に負担が小さいです。

    融資実行時に金利が決まるため、金利が動いても、タイミングや金額が分散され、高すぎず、安すぎない金利になりやすい。

    利用者にとってのデメリット

    つなぎ融資を利用すると、金利が2~4%と高めであることが多く、費用が高くつきます。

    つなぎ融資を利用すると、手続きの回数もふえて、煩雑になります。

    金利が上昇局面にある場合には、利息が高くなりやすいです。

    完成までの間は、団体信用生命保険がつかないため、万が一建築中に死亡すると、建物の完成が難しくなります。